2026年8月2日付の MiniMax H3 のライセンスは、第I条5項で EU・英国・韓国・米国を除外している。日本は許諾範囲に入っている。そこまで確かめて安心しかけたところで、第V条4項が生成物の扱いまで縛っていることに気づいた。
MiniMax H3 をローカルで動かす記事を書くために、環境を作る前に規約を読んだ。読んでよかった。記事の作り方が2箇所変わったからになる。生成した動画を載せられなくなり、後段のアップスケーラに商用不可の条件が付いていることも分かった。
先に筆者の判断を書いておく。「オープンウェイト」と書いてあっても、条文を読むまで何ができるかは分からない。H3 は日本で使えるが、生成物の公開には制限があり、しかも一番きつい制限は H3 の規約の外にあった。以下、確かめた順に書いていく。
踏むライセンスは1つではなく4つ
「MiniMax H3 をローカルで動かす」と言ったとき、実際には性質の違うライセンスを同時に踏む。後段のアップスケールまで入れると4本になる。HuggingFace と GitHub の LICENSE 本文を取得して確かめた結果を先に置く。
| 対象 | ライセンス | 確認した場所 |
|---|---|---|
| MiniMax H3 の重み | MiniMax H3 Community License Agreement(2026-08-02版・独自規約) | MiniMaxAI/MiniMax-H3 の LICENSE |
| テキストエンコーダ Qwen3-VL-32B | Apache 2.0(ただし下の注意) | 上記 LICENSE 末尾の Additional Note / QwenLM/Qwen3-VL の LICENSE |
| ComfyUI 本体 | GPL-3.0 | クローンした LICENSE の先頭行 |
| 4x-UltraSharp(後段アップスケール・任意) | CC BY-NC-SA 4.0(表示・非商用・継承) | Kim2091/UltraSharp のモデルカード |
テキストエンコーダには注意が要る。Qwen3-VL-32B 自体は Apache 2.0 で、根拠は H3 の LICENSE 末尾の注記になる。ただし実際に落とすのは Comfy-Org が再パッケージした qwen3vl_32b_minimax_h3_nvfp4_awq で、あのリポジトリは frontmatter で全体を H3 の独自規約下だと宣言している。「エンコーダは Apache 2.0 だから再配布自由」とは読めない。上流モデルの素性と、手元に落ちてくるファイルの条件は別物になる。
4x-UltraSharp のほうははっきりしている。CC BY-NC-SA 4.0 なので商用利用ができない。仕事で使うなら後段処理を外すか、商用可の別モデルに差し替えることになる。継承(SA)が生成物にまで及ぶのかは CC の文面から読み切れないので、そこは保守側に倒したほうがいい。筆者は記事のために手元で回しただけで、成果物はどこにも出していない。
ここが読者に一番効く落とし穴だと思う。この制限は H3 の規約をいくら読んでも出てこない。画質を上げようとして後段に足したモデルが、勝手に商用可否を決めていた。
地域制限は「除外」の側で書かれている
いちばん重いのは1行目。独自規約で、しかも地域を切っている。
§I.3 Applicable Territory = worldwide, excluding the Excluded Territories
§I.5 Excluded Territories = the European Union, the United Kingdom,
the Republic of Korea and the United States of America
除外されているのは EU・英国・韓国・米国の4つ。日本は許諾範囲に入っているので、国内でローカル生成する分には申請も許可も要らない。
ここは読み違えやすかった。同じリポジトリの docs/QA-about-License.md は見出しが “Why is MiniMax-H3’s open-weight license currently limited to the EU, UK, South Korea, and the US?” となっていて、素直に読むと「その4地域だけで使える」に見える。筆者は最初そう読んだ。本文と §I.5、README の「申請フォーム(USA/EU/UK/South Korea 限定)」という注記を突き合わせて、4地域が除外側だと分かった。見出しだけで判断すると逆になる。
理由も QA に書いてある。EU AI Act の施行、英国と韓国の規制の不確実性、米国では MiniMax 自身が生成動画をめぐる著作権訴訟の当事者になっていること。QA には The current limitation means "not yet", not "not ever." と書いてある。除外地域の組織は個別に申請すれば使える道も残されている。
公開・配布に効いてくる条項
地域の話より実務に刺さるのが、生成物にまで制限が伸びている点になる。条文を1件ずつ本文と突き合わせた結果を表にした。
| 条項 | 何を求めているか |
|---|---|
| §V.4 | モデルに加えて Outputs(生成物)も、許諾地域の外で use / reproduce / modify / distribute / display してはならない。Exhibit A 第1項も同旨(あちらは “Use outside the Applicable Territory” とだけ書く) |
| §III | 再配布は許諾地域内の第三者に対してのみ。規約の写しを渡す・改変ファイルに改変した旨を表示する、が条件。NOTICE ファイルの同梱は Hosted Services 経由を除く配布に掛かる |
| §III.3(努力義務) | “Powered by MiniMax H3” の表示・生成物への AI 生成識別子の付与・利用体験の技術記事を1本以上公開すること。are encouraged to なので義務ではない |
| §V.2 | 他者にアクセスを与える前に、各受領者を §V と Exhibit A と同等以上の拘束力ある条件に縛り、その制限が適用される旨を通知する |
| §V.5 | 他者に生成をさせる製品・サービスを出すなら、技術的・組織的セーフガードの実装/維持/テスト/定期見直し、通報窓口の設置、通報後の調査・停止・反復違反者の排除まで負う |
| §IV.1 | 商用の製品・サービスで年間収益が2,000万米ドルを超えるなら、事前に書面での許諾を取る |
| §IV.2 | H3 を使う商用の製品・サービスは、UI に “MiniMax H3” を目立つ形で表示する |
| §V.3 | MiniMax H3 Works とその生成物を、他の AI モデルの改善に使ってはいけない(H3 とその派生を除く) |
| §VI.3 | H3 や生成物に対して知的財産の訴訟を起こすと、その提訴日でライセンスが終了する。第三者請求に対する防御・補償の義務も負う |
| §VI.4 | MiniMax は生成物に権利を主張しない。責任は利用者側にある(読者に有利な条項) |
| Exhibit A 12 | 公開の場に出す生成物には、機械生成であることを明瞭に開示する(こちらは義務) |
| §IX | 準拠法も専属管轄も香港特別行政区 |
§V.2 と §V.5 は、生成機能を他人に使わせる形(Web サービス、社内ツール、配布アプリ)にした瞬間に効いてくる。個人が手元で回すだけなら発動しない。逆に言うと、H3 を組み込んだサービスを出すつもりなら、セーフガードと通報窓口の運用まで見積もりに入れることになる。
Exhibit A には使用禁止の項目が20並んでいる。未成年の搾取、選挙への影響、なりすまし、軍事利用、無資格の専門行為など、内容は他のモデルの規約と大きくは変わらない。ただし第1項が「許諾地域外での使用」なので、地域制限が使用制限としても書かれている点は押さえておきたい。
この記事に動画を載せていない理由
当サイトは重みを再配布しないので §III は発動しない。読者の方も公式の配布元から各自で取得してほしい。
問題は §V.4 のほうになる。VRAM 8GB で動かした記事では参考事例の動画を2本作ったが、掲載していない。当サイトは全世界から閲覧できるので、生成物を置くと除外地域での “display” に当たりうる。文面上グレーだと判断して、動画は載せず実測した数字だけにした。
MiniMax 自身は、API 経由なら全世界で使えると QA に書いている。オープンウェイト由来の生成物について同じ記述は無い。この非対称がグレーの正体だと思う。
日本国内で回して自分で見るぶんには地域制限に掛からないので、同じ設定を再現すれば手元では同じものが出る。用途そのものの制限(Exhibit A の20項目)は地域と無関係に掛かる。
どう確かめたか
検索結果の要約で判断しないことにしている。ライセンスは改訂されるし、まとめ記事は古い版を引いていることがある。今回は配布元からファイルを取得して読んだ。
MiniMaxAI/MiniMax-H3 LICENSE 17,604 B
docs/QA-about-License.md 3,917 B
README.md 38,350 B
Comfy-Org/MiniMax-H3 README.md 1,830 B
QwenLM/Qwen3-VL LICENSE 11,357 B
Kim2091/UltraSharp README.md 1,613 B
4x-UltraSharp については3つの経路で一致を見た。HuggingFace API が返す cardData.license が cc-by-nc-sa-4.0、リポジトリのタグが license:cc-by-nc-sa-4.0、モデルカード本文に **License:** CC BY-NC-SA 4.0。1箇所だけ見て決めると、frontmatter とカード本文が食い違っている場合に気づけない。
ComfyUI 本体は、クローンしたディレクトリの LICENSE の先頭を見た。GNU GENERAL PUBLIC LICENSE Version 3 と書いてある。「MiniMax H3 はオープンソース」とひとまとめに書くと、ここが GPL-3.0 であることが消える。
読む前にやると危ないこと
筆者が実際にやりかけたことを2つ挙げておく。
1つは、QA の見出しだけで地域を判断すること。あの見出しは意味が反転して読める。条文の定義(§I.3 と §I.5)に戻れば1分で解ける。
もう1つは、依存モデルを1本ずつ数えないこと。筆者は最初、踏むライセンスを3本だと思っていた。画質を上げるために足したアップスケーラを勘定に入れていなかった。パイプラインに足したモデルは、その時点でライセンスも1本増える。
まとめ
H3 を日本で使う分には、申請も許可も要らない。ここは安心していい。
気をつけるのは生成物のほうになる。全世界に公開する媒体へ出すなら §V.4 の文面と向き合うことになるし、商用で使うなら後段に足したモデルの条件まで見る必要がある。筆者はこの2点で記事の作り方を変えた。
そして規約は動く。Exhibit A は随時更新すると本文に書いてあるし、地域の範囲も MiniMax 自身が「今はまだ」と言っている。この記事は2026年8月8日に取得したファイルに基づいている。使う前に本文を開いて、自分の目で確かめてほしい。
実際に動かす手順と 8GB での実測はVRAM 8GB で MiniMax H3 を動かすに書いた。ライセンス本文まで確かめる話ならClaude Codeのトークンを削るOSS 11本も近い。GitHub のライセンス欄が3本で判定不能だった話になる。