Fable、Mythos、Opus、Sonnet、Haiku。Claude のモデルは5つあり、単価は入力100万トークンあたり$1から$10まで、10倍の開きがある。7月1日、輸出規制の解除で最上位の Claude Fable 5 が全世界に戻ってきた。これを機に、5つの階層を「開発者が用途で選べる」形に一度きれいに整理する。
目次
何が起きたのか
米商務省が輸出規制を解除したことを受け、Anthropic は 2026年7月1日から Claude Fable 5 をグローバルに再デプロイした。サイバーセキュリティ関連の安全対策を更新しての復帰だ。Claude Platform・Claude.ai・Claude Code・Claude Cowork のすべてで、7月1日から順次利用できる。
再開の意味は開発者にとってはっきりしている。これまで地域によっては触れられなかった最上位モデルが、7月1日以降はどの環境からでも呼べるようになった。安全対策の更新は主にサイバー領域の悪用防止に関わる部分で、通常のアプリ開発では意識せずそのまま使える。最上位が全世界で横並びに戻ったことで、モデル選びは「どこにいるか」から「何を作るか」だけの問題になった。単価と用途さえ頭に入れておけば、あとは手を動かしながら自分の開発に馴染ませていける。
あわせて押さえたいのが、Fable 5 と Mythos 5 の関係だ。両者は同じ土台のモデルで、Fable 5 は追加の安全対策を組み込んだ一般提供版、Mythos 5 はその対策を外した承認組織向けの限定提供版という位置づけになる。
混同しやすいが、料金も API も能力も両者で同一だ。個人開発で触れるのは Fable 5 のほうで、Mythos 5 は Project Glasswing に参加した承認済み組織だけが使える。名前を見かけても、通常の開発で選択肢に入る場面はまず来ない。
【追記 2026-07-22】この記事の公開後、Fable 5 の利用形態は7月中に段階的に変わり、7月20日から恒久的な形に落ち着いた。現在は Max・Team プレミアム席・席課金型 Enterprise のプレミアム席では週次利用上限の50%までを追加費用なしで利用でき、Pro と Team Standard は usage credits 経由の従量課金(一度きりの初回クレジット付与あり)になっている。変更の詳細と公式ヘルプの読み解きはFable 5 プラン変更の一次情報を読むにまとめた。
5階層を用途で並べる
名前で迷わないために、いま generally available なモデルを「能力と単価」で並べるとこうなる。上に行くほど高性能・高単価、下に行くほど高速・低価格の階層構造だ。
単価とコンテキスト、向いている用途を一枚の表にすると、選ぶ基準が見えてくる。価格は API の従量課金(100万トークンあたり)で、入力/出力の順に記した。
| モデル | 入力/出力(100万トークン) | コンテキスト | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| Fable 5 | $10 / $50 | 1M(最大12.8万出力) | 最上位。難所の設計・複雑推論・長丁場のエージェント作業。追加の安全策込みで一般提供 |
| Mythos 5 | $10 / $50 | 1M(最大12.8万出力) | Fable 5 と同一の基盤モデル。安全策なしで Project Glasswing の承認組織のみ |
| Opus 4.8 | $5 / $25 | 1M | 最上位 Opus。厄介なバグの根本原因調査・重い設計 |
| Sonnet 5おすすめ | $3 / $15(〜8/31 は $2 / $10) | 1M | 速度と知能の均衡。日常のコーディングの主力。Claude Code の既定 |
| Haiku 4.5 | $1 / $5 | 200K | 最速・最安。大量バッチ・定型処理・軽い分類 |
ざっくり言えば、上に行くほど「難しい判断が正確」、下に行くほど「速くて安い」。個人開発で毎回最上位を使う必要はほぼない。
器の大きさも選択の材料になる。Fable 5・Mythos 5・Opus 4.8・Sonnet 5 はいずれも100万トークンのコンテキストを持ち、大きめのコードベースや長い仕様書を一度に渡せる。Haiku 4.5 だけは20万トークンで、そのぶん最速・最安に振ってある。Fable 5 は1回の応答で最大12.8万トークンまで出力でき、長い実装や設計文書を途中で切らずに書き切れる。思考(thinking)が常時オンなのも Fable 5 の特徴で、難しい課題ほど内部で腰を据えて考えてから答えを返す。
表で「おすすめ」に置いた Sonnet 5 は、8月31日までのプロモ期間中は入力$2・出力$10で、Haiku を除けば最も手を出しやすい。プロモ後も$3・$15と、Opus 4.8 の6割の単価に収まる。速度と知能の均衡が良く、当サイトの改修で実際に一番手数を稼いでいるのがこのモデルだ。日常の実装で迷ったら、まずここから始めれば外さない。
下段の Haiku 4.5 は賢さで選ぶモデルではない。何百件もの短いテキストを分類する、ログを定型フォーマットに整える、といった頭を使わない大量処理でこそ光る。1件あたりの単価が桁違いに安いので、量が効いてくる処理ほど下段が正解になる。筆者は記事の下ごしらえや一括変換のスクリプトで Haiku を回している。
同じ課題を4階層に投げて、費用と所要を測った
用途で並べる話は書けても、実際にいくら違うのかは並べていなかった。OpenRouter 経由で同じ課題を投げて測った。課題は「バグのある median() を1つ直す」。偶数個のとき中央2つの平均を返すべきところが片方だけを返している、という素直な誤りにしてある。
| 階層 | 実費 | 出力トークン | 所要 | 直せたか |
|---|---|---|---|---|
| Haiku 4.5最安 | $0.000757 | 127(推論0) | 2.4秒 | 直せた |
| Sonnet 5 | $0.002328 | 207(推論56) | 4.7秒 | 直せた |
| Opus 5 | $0.007170 | 261(推論55) | 6.1秒 | 直せた |
| Fable 5 | $0.009240 | 159(推論47) | 7.7秒 | 直せた |
4階層とも同じ修正に到達した。(xs[n // 2 - 1] + xs[n // 2]) / 2 という同じ式で、指摘の文面が違うだけになる。
費用は Fable 5 が Haiku 4.5 の12.2倍、所要は3.2倍。この課題では、払った差額と待った時間のぶんの見返りが出ていない。
階層を選ぶ判断は、ここから逆算できる。解けるかどうかが分かれない課題に上位を当てても、費用と待ち時間だけが増える。上位が要るのは、下位で試して間違えた課題のほうになる。
1回だけ、Fable 5 の応答が途中で終わった
最初の測定で、Fable 5 の返答が def median(xs):\n xs = のところで切れていた。指摘の1文は正しく書けていて、コードブロックだけが未完だった。
同じ条件で2回叩き直したら、どちらも最後まで返ってきた。finish_reason は stop、コードフェンスも閉じている。
この1件を「Fable 5 はコードを最後まで書かない」と読んだら誤りになる。1回の実行で階層の優劣を決めない。測るなら同じ課題を複数回まわして、ばらつきの幅ごと見る。
Mythos 5 は OpenRouter に無かった
上の5階層のうち、Mythos 5 だけは OpenRouter の364モデルに載っていなかった。anthropic/ で始まるモデル名を全部見ても該当が無い。
Fable 5 と Opus 5 の単価も、直感と順番が違っていた。
| モデル(OpenRouter 掲載値) | 入力 / 100万 | 出力 / 100万 | コンテキスト |
|---|---|---|---|
| anthropic/claude-fable-5 | $10.00 | $50.00 | 1,000,000 |
| anthropic/claude-opus-5-fast | $10.00 | $50.00 | 1,000,000 |
| anthropic/claude-opus-5 | $5.00 | $25.00 | 1,000,000 |
| anthropic/claude-sonnet-5 | $2.00 | $10.00 | 1,000,000 |
| anthropic/claude-haiku-4.5 | $1.00 | $5.00 | 200,000 |
Opus 5 は Fable 5 の半額で、opus-5-fast は Fable 5 と同額だった。速度を上げた版が最上位と同じ値付けになっている。コンテキスト長は Claude 5 系が揃って100万で、Haiku 4.5 だけ20万になる。
未検証: これは OpenRouter の掲載値で、Anthropic の直販価格やサブスクの枠消費とは別の数字になる。プランで使う場合の消費量は測っていない。
開発者としての選び方
モデル選択はタスクの性質で決める。惰性で「一番賢いやつ」を選ぶのは、たいてい料金の無駄になる。実務での目安がこれだ。
- アーキテクチャ設計・厄介なバグの根本原因調査 → 最上位(Fable 5 / Opus 4.8)。ここでの1回の的確な判断が、下位モデルでの何往復もの試行錯誤より安く済む。
- 日常のコーディング・リファクタ・テスト作成 → Sonnet 5。Claude Code の既定でもある。
- 大量の定型処理・分類・要約バッチ → Haiku 4.5。速度と単価で選ぶ。
筆者自身は、この上げ下げを手動でやっていない。Claude Code の設定に opusplan(Plan mode=Opus・実行フェーズ=Sonnet)と一行書いてあり、当サイトの改修もブラウザゲームの開発も基本この設定のまま回している。モデルを意識するのは、設計で詰まって Plan mode に入るときだけだ。
ポイントは「ターン数(往復回数)が総コストを決める」という視点だ。安いモデルが難タスクで2〜3倍の往復を要すれば、結局は上位モデルより高くつくことがある。難度に応じてモデルを段階的に上げ下げするのが、料金と品質の両取りになる。
具体例で言えば、複雑なリファクタを Haiku に投げて5往復かかるより、Sonnet 5 で2往復・Opus で1往復で決着するほうが、単価は高くても総額は安いことがある。総コストを最小化するのは「一番少ない往復で終わるモデルを選ぶ」発想だ。単純な整形や定型変換を最上位モデルに投げるのは、往復が1回でも単価で損をする。タスクの難度とモデルの格を合わせるのが基本になる。
気になるのは、Opus 4.8 の倍の単価を払って Fable 5 を指名する場面がどこかだ。筆者の基準は、難度が読めない一枚岩の課題を最初に一撃で通したいときに限る。依存が絡み合った既存機能を作り替える設計を丸ごと任せるような場面では、下位モデルで往復を重ねるより上位で1発の判断を買うほうが、総額で見て安く収まることがある。日常のコーディングでここまで上げる必要はまずない。
実践ポイント
- 既定に流されず、タスク開始時に一度モデルを意識する。Claude Code なら
/modelで切り替えられる。筆者のようにopusplanで自動化してしまう手もある。 - Mythos 5 は一般用途では基本不要。承認組織向けの限定提供であり、通常の個人開発は Fable 5 / Opus / Sonnet で足りる。
- 「安全対策あり=Fable 5」を既定に。差分を正しく理解して選ぶ(詳しくは公式の Fable 5 / Mythos 5 の解説)。
モデル選択の目安は、実際にアプリを作りながらでないと自分のものにならない。バイブコーディングの進め方(作り方ガイド)では、どのフェーズでどのモデルを使うかを実装フローに沿って解説している。
まとめ
モデルが増えたのは選択肢が増えたということだ。名前を丸暗記する必要はない。「難しい判断は上位、日常は Sonnet 5、大量処理は Haiku」。この3段の軸さえ持てば、単価が10倍違う5モデルの中から、Fable 5 の復帰も落ち着いて自分の開発に取り込める。