Sol、Terra、Luna。OpenAIのGPT-5.6が入出力$5/$30・$2.50/$15・$1/$6の3層でGitHub Copilotのモデルピッカーに並んだ。2026年7月9日、OpenAIの一般公開と同じ日の追加で、松竹梅の価格差がそのまま推論の天井とコストに対応している。
目次
何が起きたのか
GitHubは2026年7月9日、OpenAIのGPT-5.6ファミリーをCopilotに追加したとchangelogで告知した。追加されたのはSol、Terra、Lunaの3モデル。それぞれ役割がはっきり分けられていて、Solは最高の推論天井、Terraはバランス型の既定、Lunaは軽量・低コスト版という位置づけになっている。
VS Code、Visual Studio、Copilot CLI、cloud agent、github.com、Mobile、JetBrains、Xcode、Eclipseと、対応するクライアントのモデルピッカーに順次表示される。ロールアウトは段階的なので、筆者の環境でもピッカーに出るタイミングには差があった。
Sol、Terra、Luna。太陽、地球、月というコードネームだけでは、どれを日常のエディタで指名すべきか判断材料が足りない。筆者も最初にピッカーで3つ並んだとき、名前から性能順を読み取れず数秒固まった。読者が知りたいのは、自分のプランで何が出て、1回の補完がいくらに化けるか。名前の由来は後回しでいい。
ここで読者に伝えたい落とし穴がひとつある。GitHubの案内にある「追加契約なしで使える」は正しい。ただし無料ではない。
3層の価格と推論、プラン制限を並べて見る
OpenAIのプロバイダ定価は1Mトークンあたりで公開されていて、Copilot側の課金はこの定価にひもづくUsage Based Billing(従量課金)で計測される。入力と出力で単価が違う点も含めて表にした。
| モデル | 推論の位置づけ | 入力 / 出力(1Mトークン) | 使えるプラン |
|---|---|---|---|
| Sol | 最高の推論天井 | $5 / $30 | Pro+ / Max / Business / Enterprise |
| Terra おすすめ | バランス型の既定 | $2.50 / $15 | Pro / Pro+ / Max / Business / Enterprise |
| Luna | 軽量・低コスト | $1 / $6 | Pro / Pro+ / Max / Business / Enterprise |
おすすめ行にTerraを置いたのは、日常のコーディングならコストと性能の釣り合いがいちばん取りやすいから。Solの半分以下の単価で、既定として想定された守備範囲をこなす。SolだけはPro+以上に絞られている点にも注意したい。Proプランの読者がピッカーを開いてもSolは出ない。
補足しておくと、この従量課金はCopilotの月額プランに含まれるpremium requestの割り当てとは別枠で動く。割り当てを超えたぶんや、明示的に従量課金へ倒した利用がトークン単価で課金される。どのモデルにどの作業を割り当てるかが、そのまま月末の金額に響く。
Xでは「どの層を使うか」の使い分け談義が活発で、Terraの「GPT-5.5同等で半額」というコストパフォーマンスに、料金を見直したいという声が多いらしい。伝聞なので鵜呑みにはしないが、3層の価格差を見れば話題になる理由はわかる。
1か月使うといくらか、実額で見積もる
単価だけでは体感しにくいので、中規模の開発でよくある1日の消費に当てはめてみる。入力20万トークン、出力4万トークンを月20営業日。これを3モデルと、比較用にClaude Sonnet 5のプロモ単価($2/$10)で並べた。
1日 : 入力200,000 + 出力40,000 トークン
月20日 : 入力4,000,000(4M) + 出力800,000(0.8M) トークン
Sol 入力4M×$5 + 出力0.8M×$30 = $20.00 + $24.00 = $44.00/月
Terra 入力4M×$2.5 + 出力0.8M×$15 = $10.00 + $12.00 = $22.00/月
Luna 入力4M×$1 + 出力0.8M×$6 = $4.00 + $4.80 = $8.80/月
Sonnet5 入力4M×$2 + 出力0.8M×$10 = $8.00 + $8.00 = $16.00/月
| モデル | 入力ぶん | 出力ぶん | 月額合計 |
|---|---|---|---|
| Sol | $20.00 | $24.00 | $44.00 |
| Terra おすすめ | $10.00 | $12.00 | $22.00 |
| Luna | $4.00 | $4.80 | $8.80 |
| Claude Sonnet 5(プロモ) | $8.00 | $8.00 | $16.00 |
同じ作業量でSolはLunaの5倍。月$44と月$8.80の差が天井の高さに見合う場面は、実際にはそう多くない。出力単価$30/1Mが月額を押し上げる主因で、長い応答を吐かせるモデルほど請求に跳ね返る。この見積もりは典型的な消費を仮に置いたもので、実際の金額は各自の使い方で上下する。
同じ課題を3層に投げて、実費を測った
見積もりは倍率の話で終わりやすいので、同じ課題を3層に投げて実額を出した。計測は OpenRouter 経由で行い、モデル名は openai/gpt-5.6-{luna,terra,sol} を直に指定した。Copilot のクライアントは通していない。課題は「バグのある median() を1つ直す」。
| 層 | 実費 | 出力トークン | うち推論 | 所要 | 直せたか |
|---|---|---|---|---|---|
| Luna1/42 | $0.000145 | 225 | 126 | 2.7秒 | 直せた |
| Terra | $0.001248 | 191 | 93 | 2.6秒 | 直せた |
| Sol | $0.006090 | 186 | 94 | 3.4秒 | 直せた |
3層とも同じ修正に到達した。費用は Sol が Luna の42倍で、所要はほぼ横並びだった。
出力トークンは Luna がいちばん多い。推論に126トークン使っていて、上位2層より長く考えている。安い層ほど、同じ答えに着くまでに多く書く。それでも単価差が大きいので、実費では42分の1に収まる。
単価も並べておく。-pro 付きのモデルは、非 pro と同額だった。
| モデル(OpenRouter 掲載値) | 入力 / 100万 | 出力 / 100万 | コンテキスト |
|---|---|---|---|
| gpt-5.6-sol / sol-pro | $5.00 | $30.00 | 1,050,000 |
| gpt-5.6-terra / terra-pro | $1.00 | $6.00 | 1,050,000 |
| gpt-5.6-luna / luna-pro | $0.10 | $0.60 | 1,050,000 |
層の間はきれいに5倍と10倍で刻まれている。コンテキスト長は3層とも105万で差が無い。
この結果から、月額の見積もり方が変わる。まず全部 Luna で回して、間違えた課題だけ上へ振る。上限が同じ105万トークンなら、扱える入力の大きさで層を選ぶ理由も無い。
未検証: これは OpenRouter の実費で、Copilot の従量課金は倍率換算の別体系になる。Copilot 経由で同じ課題を投げたときの消費は測っていない。
従量課金と管理者ポリシーという2つの落とし穴
無料だと思って使い倒すと、月末に請求で驚くことになる。Usage Based Billingはトークン消費をそのまま金額に換算する仕組みなので、Solに長いコンテキストを流し込むほど出力$30/1Mが効いてくる。補完のたびに最上位を呼ぶ習慣は、静かにコストを積み上げる。
ここで陥りやすいのが、補完も一括リファクタも最上位のSol任せにする使い方だ。出力トークンがSolに偏り、Billingの明細では出力側が月額を押し上げる。直し方は単純で、既定をTerraへ落とし、定型補完とコメント生成をLunaに回す。この2つを分けるだけで消費はかなり下がる。性能そのものは何も悪くなく、最上位を常用に据えた割り当ての問題になる。
もうひとつ、Business/EnterpriseではGPT-5.6ポリシーが既定でオフになっている。管理者がCopilot設定で明示的に有効化しないと、メンバーのピッカーにモデルが現れない。
「自分の環境に出てこない」という相談は、たいていロールアウト待ちか、この管理者ポリシー未設定のどちらか。組織アカウントで見当たらないなら、まず管理コンソールを確認する順番になる。
開発者としての実践ポイント
- Lunaで足りる作業(定型補完、短いリファクタ、コメント生成)はLunaに寄せる。入力$1/出力$6の安さが効く。
- 通常のコード書きはTerraを既定に置く。設計の相談から実装まで、単価と応答品質の釣り合いで迷いにくい。
- 詰まった設計判断や難しいデバッグだけSolを指名する。天井の高さが要る場面に限定すれば、出力$30の単価も無駄にならない。
- 組織アカウントなら、まず管理者がCopilot設定でGPT-5.6ポリシーを有効化する。既定オフのままではメンバーが使えない。
- 従量課金の消費状況を定期的に確認する。どのモデルにトークンが偏っているかを見て、割り当てを調整する。
例えば筆者の平均的な午前を振り返ると、変数名の整理やテストの雛形づくりは9割がLunaで足りた。設計の分岐が出てきた昼過ぎにTerraへ切り替え、認証まわりの仕様で判断に詰まった一度だけSolを指名した。1日を通して最上位を呼んだのはその一回で、残りは中位と下位で回っていた。この配分なら、月末のUsage Based Billingは最上位を常用した週の半額前後で収まる。
モデル選びと合わせて、コマンドラインでの自動実行も見ておくと運用の幅が広がる。GitHub Copilot CLIのautopilotの挙動と権限設計は先に押さえておきたい。
よくある質問
Copilot Freeでも使えるか。使えない。SolはPro+/Max/Business/Enterprise、TerraとLunaはPro以上が対象で、いずれも有料プランが前提になる。Freeプランのピッカーには並ばない。
Solはどんなときに必要か。難しい設計判断や、Terraで詰まったデバッグに限る。筆者は普段からPlanフェーズだけ上位モデル、実行は中位という割り当てを常用していて、最上位は常用に据えない。この考え方をGPT-5.6に当てるなら、既定はTerra、詰まった時だけSolになる。天井の高さが要らない作業でSolを呼ぶと、さきの見積もりどおり月額が跳ねる。
従量課金の請求はどこで確認するか。GitHubのBilling設定にあるUsage Based Billingの明細で、モデル別のトークン消費と金額を追える。週に一度この明細を開き、どのモデルにトークンが偏っているかを見ておくと、月末の驚きを避けられる。組織アカウントなら管理者が組織全体の消費も同じ場所で確認できる。
まとめ
モデルピッカーに最新が並んでも、常に最上位を選ぶのはコストの無駄。Lunaで足りる補完、Terraで通常作業、詰まった設計だけSol、と従量課金を意識して割り当てるのが、GPT-5.6を導入したあとの現実的な使い方になる。
筆者自身、Claude Codeでもopusplan(計画は上位モデル、実行は中位)でモデルを使い分けていて、Copilotの3層も同じ発想でそのまま運用できる。ピッカーに並んだ選択肢は、タスクに合わせて割り振るためのもの。一次情報はGitHubのchangelog(2026-07-09の告知)を確認してほしい。