アイキャッチ用の素材を1枚作るたび、生成した画像を自作の背景除去アプリに通してから合成している。OpenAI の画像生成 API で background パラメータに transparent を指定できるようになり(プレビュー・PNG と WebP が対象)、この工程を1つ飛ばせる可能性が出てきた。飛ばしてよいかどうかは、髪の生え際と半透明と細い線の3か所で決まる。実測はまだしていない。先に決めておくのは、何をどう見て判定するかのほうだ。
目次
追加されたもの
2026年8月20日の changelog エントリに載った変更は短い。background パラメータに transparent を指定すると、透過背景の画像を直接生成できる。生成後に背景除去を挟まずに、切り抜き済みの素材をそのまま受け取れる形になる。原文はこの1文だ。
Transparent backgrounds are now available in preview for `gpt-image-2` and
`gpt-image-2-2026-04-21` in the Images API and the Responses API image generation
tool. Set `background` to `transparent` and use `png` or `webp` output; `jpeg`
does not support transparent backgrounds.
| 項目 | 記載 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 指定方法 | background パラメータに transparent |
既定値のままなら従来どおりの出力になる |
| 提供段階 | プレビュー | 仕様と提供範囲が動きうる。正式提供と同じ扱いにしない |
| 対象形式 | PNG と WebP | JPEG は透過非対応と原文に明記されている。JPEG で受け取る経路には入らない |
| 効果 | 切り抜き済みの素材を直接受け取れる | 「背景が透明である」ことと「切り抜きがきれいである」ことは別 |
| 対応モデル | gpt-image-2 と gpt-image-2-2026-04-21 |
このエントリが名前を挙げているのはこの2つ。他のモデルが透過を扱えるかどうかは、このエントリからは決まらない |
| 使える場所 | Images API と、Responses API の画像生成ツール | Responses API 側からも同じ指定が通る |
| 単価 | gpt-image-2 は画像 入力 $8.00 / キャッシュ入力 $2.00 / 出力 $30.00、テキスト 入力 $5.00 / キャッシュ入力 $1.25(いずれも1Mトークンあたり) |
透過指定による追加料金は料金表に無い。枚数あたりの見積もりは公式の計算機で出す |
プレビューという但し書きを落とすと、記事が「もう置き換えてよい」と読める。当サイトが画像モデルの記事で毎回引っかかるのがこの線引きで、Meta の Muse Image を扱った回では API 提供の有無そのものが焦点になった。使える場所が限られている段階の機能を、既存の工程と入れ替える形では紹介しない。
比べる相手は、自分で作った背景除去アプリになる
当サイトは背景除去アプリを7本の連載で作っている。PyQt6 と3枚の純関数レイヤで土台を作り、FloodFill・クロマキー・Color-to-Alpha の古典 CV エンジンを載せ、BiRefNet を ONNX でローカル推論させ、5本のスライダーと消去/復元ブラシで仕上げる構成だ。最終回では MAE・edgeMAE・IoU・corner の4指標で目視を数値化して、プリセットの掃引と pytest の回帰まで作った。
生成時に透過を指定する経路が使えるなら、この連載で作ったものの出番が減る場面が出てくる。減るなら減ると書く。減らないなら、どの被写体で減らないのかを書く。連載の1本目を読んで手を動かしている読者にとって、いちばん知りたいのはそこになる。
連載で使った「疑似正解」が、今回は作れない
正解のアルファマスクが無い問題は、連載でも同じように出た。あのときは Step 1 で疑似正解を作って回避している。目視レビューを通した出力を「正解」として固定し、以降の変更をそれとの差で測る形だ。正解が外から手に入らないなら、自分で1つ固定してしまえば4指標は動く。
今回はその手が使えない。疑似正解が成立するのは、比べる対象が同じ1枚の画像だからだ。透過を指定して生成した1枚と、背景付きで生成して自作アプリで抜いた1枚は、同じプロンプトを投げても被写体の形が違う。固定する対象そのものが2つに割れている。
例えるなら、2人の職人に「同じ写真から人物を切り抜いてくれ」と頼むのではなく、「それぞれ絵を描いて、背景だけ抜いた状態で持ってきてくれ」と頼んでいることになる。上がってきた2枚は絵柄からして違う。腕を比べるには、絵の出来ではなく切り口の性質を見る必要がある。
判定の主役を「正解との一致」から「切り口の性質」へ移す。3段構えにした。
判定1(目視・3観点)
髪の生え際、半透明(ガラス・煙・薄い布)、細い線(脚・アンテナ・線画)の3か所を等倍と拡大の両方で見る。観点ごとに、透過指定が良い/差が分からない/自作アプリが良い の3段階で記録する。判定した本人と判定日を併記する。
判定2(数値・アルファの性質)
出力のアルファチャンネルだけを取り出して、次の2つを数える。
- 中間アルファの割合: 完全な透明でも不透明でもない画素が全体に占める割合を
%で出す。境界が硬いか柔らかいかが数字になる。 - 合成したときのハロー: 出力を白背景と黒背景の2色にそれぞれ合成し、境界付近の画素差を見る。元の背景色が縁に残っていると、2枚の差が境界に沿って出る。
この2つは、正解が無くても計算できる。どちらが「良い」かを機械が決めるわけではない点は先に書いておく。中間アルファが多いことは、髪では長所になり、直線的な縁ではぼやけとして短所になる。数値は判定1の裏づけに使い、単独で勝ち負けを決めない。
判定3(運用の数字)
1枚あたりの所要時間、出力ファイルサイズ(PNG と WebP それぞれ)、API の実費。透過指定は API 側で1回、自作アプリは生成1回にローカル推論が加わるので、同じ土俵に乗せるには工程全体で測ることになる。
測定条件を先に固定する
条件を後から決めると、都合のいい結果が出た試行だけを残せてしまう。書く前に固定した。
| 項目 | 決めた値 | そう決めた理由 |
|---|---|---|
| 被写体 | 3種。髪のある非実在のキャラクター、半透明の器物、細い線の多い器物 | 苦手部分を1種類ずつ担当させる。1枚で全部を見ようとすると原因が混ざる |
| 被写体の条件 | 商標・ロゴ・実在人物・他者の作品を含まない。プロンプトにブランド名と人名を書かない | 生成物を記事に載せるため。生成時のプロンプトで排除する |
| 試行回数 | 被写体ごとに3回 | 1回の結果で比べない。当たり外れの幅を見る |
| 画像サイズ | 1サイズに固定 | 比べるのは切り抜きの質。サイズを変数にしない |
| 出力形式 | PNG と WebP の両方 | 対象形式が2つある。ファイルサイズの比較にも要る |
| モデル | gpt-image-2-2026-04-21 の日付付きに固定 |
エイリアスの gpt-image-2 は指す先が動きうる。日付付きなら後から同じ条件を再現できる |
| 自作アプリ側の設定 | 連載で作ったプリセットの既定1つに固定。ブラシの手修正は使わない | 人の手が入ると腕比べになって再現できない |
| 記録 | 測定日・モデル名・サイズ・試行番号を、数値のすぐ隣に書く | プレビュー機能は仕様が動く。日付の無い数値は後から使えない |
自作アプリ側でブラシの手修正を封じているのは、連載の主張と逆に見えるかもしれない。あの連載は「自動で9割、手で1割」を仕上げの形として作った。手の1割を入れたまま比べると、比較の結果は道具の差ではなく作業時間の差になる。手修正の価値は、比較とは別の節で書く。
結論の出し方も、測る前に決めておく
どちらかを全面的に推す書き方はしない。3観点のうち2つ以上で破綻が少なかった側を、その観点に限って推す。差が分からなかった観点は、差が分からなかったと書く。
透過で受け取れることと、透過を使うことも分けておきたい。当サイトのアイキャッチは横1280・縦720の JPEG に正規化して使っていて、最終的に背景の載った1枚になる。背景を敷いた完成品しか要らない場面では、透過で受け取ってから背景を合成する工程が増える。透過が効くのは、素材を別の背景の上に重ねる場面に限られる。
速さの話も同じ形で切り分ける。GPT-Image-1.5 で精密編集を扱った回では、1枚直すたびに全体が別物になる引き直しが時間泥棒だと書いた。透過指定はその引き直しを減らす方向には効かない。減らすのは、生成した後に別のアプリを立ち上げる工程のほうになる。
プレビュー段階のものを、既存の経路と入れ替えない
アイキャッチ生成スクリプトに透過経路を足すとしても、既定は既存のままにする。分岐を1つ増やすだけで、従来の経路は消さない。プレビューが終わったときや、仕様が変わったときに戻る先が残る。
新しい画像モデルが出るたびに同じ判断をしていて、Aurora を扱った回でも既存パイプラインの何を検証すべきかという形で書いた。生成の質が上がったかどうかより、既存の工程に差し込んだときに何が壊れるかを先に見る。
記事に載せる画像の扱いも先に決めておく。生成した画像は AI 生成である旨を明記して載せる。純粋な AI 生成物に「©・全権利保有」の表記は付けない。プロンプトの段階で商標・実在人物・他者の作品を排除するのは、比較の条件であると同時に、載せる前提でもある。
実測はまだしていない
本稿の時点で、この機能を叩いていない。書いたのは条件と判定の枠までで、生成結果・比較結果・所要時間・ファイルサイズはいずれも未実測になる。
試行の上限を被写体3種 × 3回 × 形式2つに先に固定してあるのは、実費が読めないうちに回数を伸ばさないためだ。gpt-image-2 の画像出力は1Mトークンあたり $30.00 で、1枚あたりのトークン数はサイズと品質で変わる。枚数あたりの金額は公式の計算機で出してから叩く。回数を後から増やすと、増やした理由が「良い結果が出るまで引いた」に見える。
一次ソース
- OpenAI API changelog(公式) — 2026年8月20日のエントリ(
backgroundパラメータのtransparent対応・プレビュー) - OpenAI API Pricing(公式) —
gpt-image-2の単価(1Mトークンあたり)
関連記事
- OpenAI GPT-Image-1.5 — 精密編集をアイキャッチ量産に活かす
- xAI の Aurora — 既存パイプラインの何を検証すべきか
- Meta「Muse Image」がアプリ内に — API 無しをどう見るか
- ローカル AI で背景除去アプリを作る① — 壊れない土台
まとめ
透過背景の画像を直接受け取れる経路が増えたことと、自作の背景除去が要らなくなることは、同じではない。決めるのは髪の生え際と半透明と細い線で、そこを見るには条件を固定した比較が要る。
本稿で確定させたのは、被写体3種・各3回・1サイズ・PNG と WebP の両方・プリセット固定・手修正なし、という条件と、目視3観点を主に数値を裏づけに使うという判定の形になる。結果はこの条件で測ってから書く。読者が同じことを試すなら、条件のほうを先に決めてから API を叩くと、出てきた画像に引きずられずに済む。
未検証のまま残したこと。API を叩いていないので、切り抜きの質・所要時間・ファイルサイズ・実費はいずれも未実測になる。対応モデル名と単価は changelog と料金表で確認したが、1枚あたりに何トークン乗るかは計算機に通していない。中間アルファの割合とハローの見方は自分で決めた測り方で、公開されている評価手法に照らして妥当かは確かめていない。